現在の位置:トップ > 目次 > ウッチャンの落書きストーリー第10回

第8話

この物語の主人公の名は、ウッチャン!中途失明の視覚障害者である。
現在は、世間と言う大学で、生活社会学を学ぶ学生なのだ。

2004年新春のご挨拶ダヨゥン!

HPをご覧のみなさん。
明けましておめでとうございます。
まいど、ウッチャンです。
どこまでつづくか、ウッチャンの落書き。
「コラァ、だれだぁこんなとこに、落書きしたのはぁ。」
と、そろそろ怒られると想っていたんですが、まだ
だいじょうぶみたいなので、今年も落書きしようと想ってまぁす。
それではみなさん、ヨロシクネ!

第八話 山手線 ショートストーリー

ルーズソックス&ミニスカートのコギャルのイラスト                 

ウッチャンが、一人暮らしをしていた頃の話です。
ある日の午後、山手線の電車にウッチャンは乗っていました。
新宿から乗ったのだが、平日の昼間だと言うのに乗降客は多く、ドア付近にいたかったのに、後ろから乗ってきた人達に押されて電車の奥へ押し込まれるウッチャン。
すしづめ状態とまではいかないが、コリャ降りる時たいへんかもしんないと想った瞬間電車が動き出した。
思わず手をのばしたら運良くつり革につかまる事ができて、ホットするウッチャンでした。

原宿を過ぎて渋谷に到着、もしかしたらここで降りる人が多くいるかもしれないと考えていたら大当たりで、今までの混雑がうそだったように車内はすいてきたのです。
ところが、ホットしているウッチャンの耳に、あの独特の話し方をする集団の甲高い笑い声が聞こえてきたのです。
そしてなぜか、その集団の一部が、ウッチャンのとなりにやって来て話し始めた。
アーア、まだ混んでる方がましと想うウッチャンでした。

しかし、このコギャルたちが、ウッチャンが思いもつかない行動にでるのである。
渋谷からひと駅過ぎた頃、わけのわからない言葉で会話をしていたのに、静かになって、小声で何やら話し始めた。
ヘェ、おとなしくなる事もあるのかと想っていたら、突然それまで以上の大きな声で、 
「最近の大人は、チョウムカツカナイ。」
「そうそう、チョームカツク。特に、わかってんのに、気が付かないフリしてさ、チョートボケテンノムカツク。」
「ダヨネ。えらそうに、もんく言ってくるオヤジなんか、自分がヤッテンコトワカッテナイシー、イヤダネーチョーキライダモン。」

となりに居るウッチャン、なんだ、オマエラこっちが、チョームカツクゼと、コギャルたちの会話にハラをたてていた。
しかし、二人の会話を聞いていると、目の前に障害者が立っているのに、席をゆずろうとしない、それに寝たフリしている、それがむかつくのだと言っているのである。
それに、気が付いたウッチャン、なんとも表現できない気持ちになった。
ただ二人の会話がすごすぎるのである。自分のためにしているのはうれしい事なのだが、もういいよと言いたくなるほどなのである。
そして、おもいきりストレートパンチの会話。
「だいたい昼間の電車ン中で、寝てしまうほど仕事してないし、だいたいできるカオしてない。キャハハハ。」「ウッソー、そんなオヤジ見たことナーイ。」
「ウッソー、目の前にいるジャーン、寝たフリしてさ。」
「アッ、ホントダ、ヤッダー、チョーダサイオヤジ」
ここまで言われたら席を立つしかない、ウッチャンの前に座っていた人は、まるで逃げるように席を立ってどこかに行ってしまったのです。
すると二人が、「キャハハハ、ヤッタネ。」と言った後、「オジサン、前の席あいてんから座ったら。」とウッチャンに声をかけてきた。
それを聞いてとまどいながらウッチャンは、「エッ、イイノカナァ。」と遠慮がちに返事をしたら、「いいのいいの、なんでかあいてんだから、座れば。」と返事。
なんでかあいてんじゃなくて、あけさせたんだろうがと思いながらも、マッ、いいかと「あっそう、ありがとう。」と応えながら座るウッチャン。
しかしなぜか、うつむきかげんで座っていた。
二人のコギャルは、そのままウッチャンの前に立って、またわけのわからない会話を始めた。
そしてしばらくすると、車内放送が、次は、品川と流れた。
ドアから離れた位置にいるのをわかっていたウッチャンは、すこし早めに席を立とうとした時、
「オジサン、降りるの?」と尋ねられ、「アッ、ハイ。」と応えると、「アブナクナイ、ドアんとこまで行ってあげる。」と言われた。
コギャルの一人に、手をつながれ、ドアまで移動。コギャル、手をつないてもらっている、喜んでいいのか妙な気分なウッチャンなのである。
とにかく、社会問題の中に出てくるコギャルと手をつなぐのは、これが初めてのこと、いままでの事は忘れて、喜んでしまえと想うウッチャンでした。
さて電車の中では、ドア付近にたまっている仲間たちに、「チョージャマ、どいて。」と言った。
話に夢中になっていたらしく、エッと驚いていたが、その中の一人が、「ヘエー、やるじゃん。チョーカッコイイー。」と言った。
すると、「ウルサイナァ、チョーテレルジャンカァ。」とてれながら応えていた。
電車がホームに入りドアが開くまでのほんの数分か、数秒の間だが、仲間にひやかされ、テレながらも、ウッチャンの手を離さずいる、このコギャルの中にある
失ってはいないやさしさを、ウッチャンは感じていた。
やり方に問題があるのは事実だが、どう行動したらいいのかわからないだけ、わかっていて動こうとしない大人より、今のウッチャンには、うれしい存在だと言っていいだろう。
ドアが開き、ウッチャンといっしょに降りてしまったコギャルに、あわてたウッチャン、
「早く乗らないと。ほんとうにありがとう、助かったよ。」と声をかけると、
「だいじょうぶ、乗れるから。おじさんアブナクナイ?」と言われ、
「ここまで来たら目をつぶっても歩けるから。」と応えると、例のごとく、キャハハハと笑ってくれた。
それまでひやかしていた仲間たちだったが、だまってその光景を見ていた。
その中の一人が、「チョーカッコイイー、まじにカッコイイー。」と歓声にもにた声を上げたのである。
それを聞いて、いっしょに降りてしまったコギャルは、「マジ、カッコイイ。キャハハハ、なんかチョーウレシイー。」と応えながら、電車に乗った。
そして発車のベルとともに、他の仲間たちが、ホームにいるウッチャンに、「オジサン、気を付けてねぇ。」と声をかけた。
それに応えるように、ウッチャンも「アリガトーネ。」と応えたのである。
電車がホームから離れるのと同時に歩き始めた。コギャルたちにはジョークを飛ばしたが、山手線を利用するのは今回で三回目ぐらいなのである。
しかし、山手線に乗った新宿駅のような必要以上の緊張はなく、ホームを移動できたのである。
いやはやなんとも言えない、なんだかなぁって感じの出来事でしたが、また一つ、不安やこわさよりも、外に出掛けていく楽しさをウッチャンに教えてくれたのは間違いないようだ。

第10回終わり