現在の位置:トップ > 目次 > ウッチャンの落書きストーリー第18回

第13話

この物語の主人公の名は、ウッチャン!中途失明の視覚障害者である。
現在は、世間と言う大学で、生活社会学を学ぶ学生なのだ。

第十三話 子供たちからの手紙  
           そして、ウッチャンから子供たちへ

※このページには、29人の子どもたちのメールと、最後にウッチャンからの返信メールの内容が紹介されています。Tabキーを押して、ひとり分ずつ飛ばすことができます。
パソコンを使ったメールのやりとりのイラスト

「鼻水タラリーン!」

横浜駅構内を出て、サポートセンターへ向かって歩いているウッチャン。
岡田屋モアーズを過ぎたあたりで、カゼをひいているわけでもないのになぜか鼻水がタラーリ。
(まいったなぁ)と、思いながら立ち止まり、ジャンバーのポケットをまさぐりティッシュを探すウッチャン。
左右のポケットには入ってない、(おかしいなぁ)と、内ポケットを確かめてみる。
これまた入ってない、(まずいなぁ)と、あらためてポケットをまさぐってみる。
やはりない、その間も、鼻水は止まることなくタラタラタラリーン。
思わず、ソデでふきそうになる気持を抑え、リックの中をさがそうと、背中から降ろそうとした時、
「何かおこまりですか」と、おねぇちゃんに問いかけられた。
その声の方向に、鼻水タラリーンのままの顔を向けてしまった。
アー、もうせっかくの色男がだいなし。
ウッチャン!ザンネーン!
あわててうつむき、使いたくなかったハンカチを出し軽く鼻をふいて、
「イヤー、ソノー急に、鼻水が出たもんでティッシュを探したんですけど、ソノー、みつかんなくて、いつも持って出てるんですけどぉスンマセン、つまんないことで声をかけてもらったみたいでぇ」とテレ笑いをしながら答えた。
すると、まるでわかっていたかのような早さで、
「コレ、使ってください」とウッチャンに、ティッシュを手渡したのです。
大げさではなく、地獄に仏とは、こう言う事を言うのだろう。
礼を言って、受け取ると、ポケットに入れようとしたウッチャンに
「アノー、今鼻を、拭かれた方がいいですよ」と、おねぇちゃん。
これに、「ハイ」と、すなおに従い、白杖を小脇にかかえて、鼻を拭こうとすると
「杖を持っていてあげましょうか」の言葉。
これまた、すなおに従うウッチャン。
鼻をかんで、、杖を受け取り、あらためて礼を言うウッチャン。
すると、「よかったら、このティッシュもドウゾ」とウッチャンに差し出したのである。
受け取ると、ナント!携帯用ティッシュが三つ。
それには、「こんなにはいただけません、アナタにも必要ですから」と、ウッチャン。
これに、笑いながら「いいんです、仕事で配っている者ですから、それにたくさんあるし、なくなれば早く終わることができます。受け取っていただいた方が助かるんです」
のおねぇちゃんの返事。
これに、オドロキながらも以前、ティッシュ配りをしていたおねぇちゃんに、誘導してもらった事を思い出していた。
そして、「仕事中なのに、声をかけてくれて、ありがとうございます。そう言うことなら、もらえるだけもらっちゃいます、リックの中にスキなだけ入れちゃってください」と、言葉を返した。
「エー、いいんですかぁ」と、喜ぶように、答えてくれたおねぇちゃん。
ウッチャンの手をとり、歩道のハジへ。
ウッチャンの後ろにまわり、シツレーシマース」と、言いながらリックを空けティッシュを入れ始めた。
「たくさんあって困ることはないから、遠慮しないで入れてくださいね」のウッチャンの言葉に、
「それじゃ、後少しだけ」の返事。
リックを閉めると、ウッチャンの前に回り込み今時の若い女の子に戻ったような笑い声で、エヘヘ、アリガトウ」とひと言
「イヤー、助けてもらったのは、こっちの方です。ありがとう」と、ウッチャン。
誘導してもらって、サポートセンターまで行くことはできなかったがそれを望むのは、ゼイタクすぎるかもしれなかった。

家に帰って、リックの中から、ティッシュを出して数えてみたら、30枚!
携帯用ティッシュと言えども、30枚ともなると重たくなるもんだなぁと、苦笑いのウッチャンでした。

第19回終わり